ゆうきくんを忘れる為に、他の人を好きになったつもりになって、他の人と付き合って、もう一年半が過ぎて、大好きなゆうきくんとの関わりもなくなったはずなのに。
最初の頃、それでもゆうきくんから離れられなくて、電話がなれば飛び付いて、声を聞けば泣いて、だけどそれは許されないことだから、泣きじゃくる私を尻目に恋人がゆうきくんに「もう連絡しないでくれ」、そんな悲しいメールを送った。
それから一度も連絡はなくて、ちょうど店を辞めた私には会う機会もなくて、このまま、私の中から薄れていくゆうきくんを思い出にするしかないんだと思った。
一年以上経ってつい最近店に戻って、もしかしたら会えるかもしれない、そんな甘い期待と、忘れられてるんだろうという諦めが頭の中をぐるぐると駆け巡って、怖くて仕方がなかったのに、
なんでかな。
なんで覚えててくれるのかな。
ひさしぶりに会ったゆうきくんは、なんだか素っ気なく思えて、やっぱりなと思ったのに、私の手を握って、「ひさしぶりだね。元気にしてた?」なんて笑うんだ。
「相変わらずかわいいね」
「あたしのことたまに思い出して元気してるかなって思ってたんだよ」
「忘れたりしないよ」
嬉しい言葉ばかり言って、連絡しないでというメールに傷付いたんだと何度も繰り返して、ずっと私の手を離さなくて、やっぱりどうしようもなくこの人が好きなんだと思い知らされた。
「俺が一番あたしのこと好きだから」
「連絡しないでなんて言ったあたしには負けないから」
たくさんの好きを零すゆうきくんに泣きそうになりながら、何も変わらない温かい手を握り返して、私も同じ様に好きと繰り返した。
「一人で悩むのなんてかっちょわるいよ」
「なんかあってもゆうきがいるんだって思ったら怖くないでしょ」
「ゆうきがいたら強くない?」
ふざけた振りして、私を元気づけて一人じゃないんだと思わせてくれる、相変わらずずるいゆうきくんが、私の頑張る理由だったと、私の生きる理由だったと、改めて思う。
「彼氏作ってもいいけど、気に食わないけど、でも彼氏が出来てもゆうきもいる」
「ゆうきは特別、それでよくない?」
「ゆうきはだめなんて彼氏がだめだよ」
多分他の誰かが聞いたら馬鹿げてる言葉なんだ。
でも、私にとっては好きでいることを許されたようで嬉しかった。
私に恋人がいるのが気に入らないという、かわいいかわいいこの人が愛しかった。
ほんとにほんとに、どうしようもなく好きだよ。
何度も忘れようとしたけど、そんなの叶わない願いだったよ。
私の指に、腰に、触れるあなたが
キスしてと強請るあなたが
触れた薄い唇に照れる私を見るあなたが
初めて会ったあの日より、初めてキスしたあの日より、初めて抱かれたあの夜より、泣きながらあなたを消したあの日より、大好きだよ。
..tsuiki