津島博也は大変困っていた。
なんせ、席替えした隣の席に前々から苦手だった人間がきてしまったからだ。
楢陽司。それが津島が苦手な彼の名前。
楢はスポーツ万能の…でも愛想なんて、てんでない人間だ。
孤独な一匹狼を気取っているのか、いつも一人でいる。
きいた話、中学時代は不良だどうだとか…
とにかく、津島とは正反対の、人間だったのだ。
「あ、あの…」
「…あん?…」
「えっとぉ…その…」
頬杖をつきながら、目だけこちらを向く、楢。
鋭い瞳が、津島をしっかりと捕らえる。
瞬間、津島は恐さにも似た、言いようのない気持ちに襲われる。
「あ、あのっ…よ…よろしく…ね…」
恐々…と小さな声で言う津島。
本当はよろしくしたくないんだけど…なんて内心思いながら…
楢はそんな津島を見ながら、顔を真っ赤にさせ顔を背ける。
「だ、誰がお前なんかと仲良くするかよっ…」
「あ、そうだよね…ごめんね…」
そうだ。
楢みたいな不良が、例え世間体挨拶でも仲良くなんかしたくないよな…
津島はひっそり自分に言い聞かせ、楢から視線を外す。
「…〜イイゼ…っ」
「えっ…」
小さく零れた、楢の言葉。
津島はきちんと聞こえなかった為、もう一度聞き返す
「ーっ…だからっ…
どうしてもって言うなら仲良くしてやってもイイゼ…」
「えっ…いや、別に…」
「あん?」
「いえ、宜しくお願いします…」
恐々…と頭を下げる津島。
津島はまだ知らなかった。
目の前の俺様が超俺様な、ツンデレだという事に…